FC2ブログ
admin⇒

陰気なサーカス

えとぶんしょうをかくそんざい

 | ~home~ | 

Depth of Swampのあとがき

image11.jpg

 本文は、9/18日の科学世紀のカフェテラスにて作者が販売した小説「Depth of Swamp」のあとがきになります。若干のネタバレを含みます。


 150Pという制約を自ら設けてしまったゆえに、あとがきがほとんど書けなかった。もともと、作品の余韻を損ねないように、あまり長々書くつもりも無かったような気がする。今となっては思い出せないし、思い出せないって事は、きっとどうでも良い事なんだと思う。
 本作は僕が秘封を知り、秘封にハマり、自分の秘封を妄想した2、3年間の間に思いついた断片的なネタを、複数融合する形で誕生した。具体的には、「ドッペルゲンガーの恋人」「喫茶マヨヒガへようこそ」の二つの作品の融合体になる。

 「ドッペルゲンガーの恋人」は、恋人として付き合い始めてからしばらくした蓮子とメリーさんの前に、それぞれの恋人の姿をしたドッペルゲンガーが現れるというもの。そして、二人は恋人がすり替わっていることに気付くことも無く、静かに破滅していく。そう云った筋書きのお話だ。

 「喫茶マヨヒガへようこそ」は、秘封倶楽部とはまったく関係の無いお話だった。何処にでも在って、何処にも無い、そんな喫茶マヨヒガと云う喫茶店に悩みを持った幻想郷の住民がやって来るというもの。原作の東方の世界とはパラレルワールド的な世界観を意識していて、店長の”謎の金髪の女性”が悩みを解決してくれる、一話完結のお話。

 この二つがどう合体して本作になったのだろう……?
 前者を本当は形にしようと思っていた。けれど、プロットを軽く見るだけで、気分が暗くなる。処女作がこれと云うのはいかがなものか。困り果てた。
 確かそこから2か月ほど筆が止まった。
 バッドエンドはナンセンスだと思う。物語の終わりは大団円じゃなきゃ駄目だと信じている。しかし、どうにも結末が、ハッピーエンドが思いつかなかった。
 そこで、初期に書いていた60000文字を思い切って全消去してみた。バックアップなど何処にもない。ゼロからプロットを考え直してみた。

 僕にしか書けない話って何だろう?僕の好きな秘封って何だろう?

 問答している際に、少し面白いテーマにぶつかった。
 「沼の男」だ。ドナルド・デイヴィッドソンの提唱した同一性に関する思考実験である。割と有名なので、その分野に興味のある人は知っている話だろう。
 そこで、何かを思いついた。自分のメモ帳にある話の種を見直していたら、一本のプロットが頭の中で出来上がった。
 それが本作だった。思いついたころは、この作品に名前は無かった。けれど、面白くなりそうな気がした。
 実際、書いていて割と楽しかった。キャラ達の会話は頭の中でキャラ同士が勝手に喋ってくれるので楽だったし、情景描写もキャラの思考をトレースすると自然に思い浮かんだ。
 苦しんだのは、如何にして作品の中で哲学的な命題に言及するか、という事。
 思考するのはメリーさん、酷い目に遭うのは蓮子、語る人は謎の女性。ポジションが決まっても、中々彼女たちは哲学的な命題を噛み砕いて説明してはくれない。当たり前なんだけど。
 哲学を噛み砕いて、分かり易く作品に混ぜ込むのは僕の仕事だった。
 哲学にさほど興味のない第三者の目が欲しかった。協力者の話は以前の記事で言及したので、割愛する。
 彼には何度も「分かりにくく無いか?」「もう少し分かり易くした方が良いか?」と尋ねた。尖ったテーマを扱う以上、細心の注意を払うべきだろうと考えていた。読者に不必要な負担を掛けたくなかった為である。
 一番気を遣ったのは2章である。
 2章に関しては読者に心理的な負担を強いたかった。イメージとしてはドグラ・マグラ。脳が腸ねん転を起こしそうな感覚に陥って欲しいと思って書いた。しかし、それで読むのを投げられてしまってはしょうがない。ギリギリのラインを狙って”読み難く”してみた。
 
 本書は製作費的に1000円未満にすることが不可能な事が割と初めから分かっていた。文庫本150Pが1000円である。控えめに云ってバカ高い。そんな事が許されるのかと不安になるレベルで高い。
 だから、最低でも二読してもらえる作品を目指した。1週目と2週目、見えてくる世界の異なる作品を目指して執筆した。300Pで1000円、少し高いが許容される価格だろう。二読する魅力を感じて貰えなかったら、それは完全に僕の実力不足だ。もしも、一読して物語の全体像が見通せて、もう一読する価値も感じなかったら、是非とも僕に伝えて欲しい。次回作は、必ずあなたを満足させられる様な作品にする事を約束する。

 読み直して未熟と感じる部分が大きい。それでも、現在僕の持ってるリソースは余すことなく消費して結晶した作品が今作「Depth of Swamp」だ。直訳すれば、沼の深さ。depthには悲しみや絶望の深さ、なんて意味もある。さほど深く考えずにつけた名前だから、さほど気にしないで欲しい。そうだな……略すときはDoSとか呼ぶと良いのかな。

 本作に込めたメッセージをここで語るのは余りに無粋だ。
 本の解釈は人の数だけある。僕は一つの解答を用意しているけれど、それは模範解答ではないかもしれない。絶対的な正しさなんて何処にも無いんだから。

 最後に、本作のキャッチコピーは「私はまだ、私を私たらしめる境界条件を知らない。」だ。これはメリーさんの視点に立ったセリフな訳だけど、実はこのキャッチコピーには続きがある。
 ここまでこの記事を読んでくれた奇特な方には、折角なので問いを投げよう。
 この続きを、是非考えてみて欲しい。
 どんな言葉が続くんだろうか。長いのか、短いのか。はてまた、この続きがあると云うこと自体が虚構なのか。

 僕は考えてくれるみんなの姿を想像しながら、そっと筆を置こう。
 
スポンサーサイト

comment

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 | ~home~ | 

プロフィール

clown

Author:clown
動物も居なければ、トランポリンもブランコも無い、道化師1人の演目を御覧あれ。


最新記事


最新コメント


月別アーカイブ


カテゴリ

未分類 (1)
ゲーム (9)
同人 (7)
音楽 (3)
雑記 (12)
書籍 (0)

検索フォーム


RSSリンクの表示


リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる