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陰気なサーカス

えとぶんしょうをかくそんざい

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あとがきと後悔

去年の今頃、僕はMUSICUS!の発売を心待ちにしていたと思う。あの瀬戸口廉也が帰ってくる、と聞いて胸を躍らせた人間は少なくないだろう。僕もその一人だった。
 もうあれから一年も経ったらしい。本当に虚無な一年間だったな、と振り返ってみて感じる。静岡例大祭も京都秘封もなくなり、サークル活動を開始してから、はじめて一度もイベントにサークル参加をしない年になってしまった。とはいえ、今年も例年通り、二本以上小説は描いているのだ。それらは、発表する機会が失われてしまったから、BOOTHやDLsiteといったサービスを利用して頒布した。やはり、イベントで頒布したときほどは多くの人の目に触れないため、売上としては小規模だった。作品のクオリティとしてはそれなりに自信があったので、非常に残念だ。

 このブログでは、小説のあとがきの補足、という蛇足極まる何かを書いている。小説の末尾にも見開き1頁程度の分量で既にあとがきは書いているのだが、あれは読者の読後感を損なわないために、非常に簡潔に記述している。たとえば、映画を観終わったあと、突然舞台袖から監督が現れ「この作品は~~にこだわっていて、~~というテーマで……」と説明しはじめたら萎えてしまうだろう。つまり、そういう配慮だ。しかしながら、何か作品を作る以上、そこには溢れんばかりの想いがあり、それを読者に早口で説明したくなってしまうのだ。だから僕は、こうしてチラシの裏に書き留めておき、誰でも見える形にしておくことで、その衝動を抑えている。だから、どうか許して欲しい。


・赤橙~What Dreams Do Androids Have?~

 自分でも続くと思っていなかった秘封×スチームパンク小説の二作目。既に設定は出来上がっているから、あとは書くだけという形で、そんなに苦労はしなかった。それに魔法の言葉
「東方の二次創作なんて、だいたい東方でやる意味ないでしょ」
があるので、本当に好き勝手にやった。
 でも全く苦労しなかったかと云われるとそうではなくて、幽々子様のキャラクタには非常に悩んだ。妖々夢編で幽々子様が出てくることは決めていたのだが、本編でも掴みどころのないキャラクタとして描かれているため、どう描写したものかと非常に悩んだ記憶がある。幽々子様っぽさを感じて貰えたら、とても嬉しい。永夜抄編では、妹紅と蓮子で色々したいなと思っていて、ガンアクション多めになっている。書いていてとても楽しかった。
 僕は秘封スチパンは書いていて楽しいが、読者が置いてきぼりになっていないか不安である。まあ同人である以上、刺さる人には勝手に刺され、という心待ちでいいのかもしれない。複雑な設定を持つスチームパンクで、主人公がエリートのチームから追放されて見返すことも、ハーレムを作ることも、無双することもない、時代の流れに逆らったお話であるから、奇特な人だけついてきて欲しい。シリーズものとして舵を切ってしまった以上、必ず完結させることを、ここに約束する。

・不透明フラクタル

 仮タイトルは「他愛もない百合短編~万引き編~」である。いくつか裏で書いていたオリジナルの短編百合小説を適当に手直ししたものである。今年のテーマとして、「簡潔にまとめる」というのがあったので、短編部門で百合姫コンテストには投稿した。感想としては、一つの物語を描くにあたってキャラ設定の説明が必要なものは2万文字が最低ラインだな、と感じた。同人小説であれば、ある程度のキャラ設定が読者の中にあるため説明を省略できるが、オリジナルでそんなことをすると、薄っぺらい作品になってしまうだろう。改めて短編の難しさを感じたし、短く纏めることのできる人は凄いな、と感心した。
 人生ではじめて主人公とヒロインを高校生に設定したのだが、やはり無茶だったな、と感じた。あと、ツンデレも苦手である。「私」に名前を与えなかったのは読者に彼女に感情移入をして欲しかったからなのだが、感情の死んでるキャラに感情移入というのもおかしな話だと後で思った。色々と酷い小説だが、爽やかさを意識して作っているから、陰気なサーカスの小説としては清涼感があったのではないだろうか。

 今後の予定だが、12/31の秘封蓮花蝶オンラインで短編三部作の一作目を発表し、その後も執筆が完了次第、随時公開していく。ただ来年は色々忙しいため、どうなるかは分からない。また、三部作が完結したら、秘封スチパンの続きを書いていく。あまり考えていないのだが、たぶん四部作になると思う。群青、赤橙に連なる次の色を、誰が待っているのかは知らないけれど、楽しみにして欲しい。
 流石に一年間一度もブログを更新しないのもな、と思って勢いで雑な記事を書いてしまったな。後悔は先に立たない、というのは往々にして真実であると、身をもって体感した。
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MUSICUS!感想~この、くそったれな世界に、精一杯の愛をこめて~

半はネタバレを含まない全体的な感想。後半はネタバレを含みつつ、瀬戸口廉也氏の過去作の話を交えてアレコレ述べる。


CLANNADは人生って言葉がある。これは痛い発言扱いされているのだけど、筆者はそんなに間違ってないと思っている。
多くの恋愛ADVは、人生のごく一部にスポットを当てて描写されている。たとえば学園生活とか、社内恋愛とか。でもCLANNADは、学園生活から始まり、結婚し、子供ができて、主人公は父親になる。要するに、描写されている期間が長い。だから、他の恋愛ADVと比較すれば、人生を描いているって云ってもいいだろう。

MUSICUS!は人生を描いている。
作品全体として、人生観を問うような作りになっているし、主人公の心情を追うことで、自然に彼の人生を追体験することができる。

推奨クリア順は
弥子→めぐる→no title→三日月

推奨というか、おそらくこの順でやることが想定されているんだろうなって思った。

瀬戸口氏の書くキャラの面白いところは、それぞれのキャラにちゃんと人生があるところだろう。キャラは単なる舞台装置に留まらず、その思想や言動にはちゃんと背景が存在している。だから、フィクションである物語にリアリティが感じられる。それはきっと瀬戸口氏自身の人生経験であったり、他者への観察眼のなせる技で、心の底から尊敬しているし、畏怖している部分もある。

とにかく、キャラが生き生きとしている。どのキャラにも一定の理解が出来るし、愛せるキャラもたくさんいる。当然不快はキャラもいるけれど、その不快さにもきちんと理由があるのが素敵だと思う。


全体の感想は以上でおわり。






























以下、ネタバレを含む雑記。


不快さにも理由があると云ったけれど、香織とかいうクソ女は本気で殴り飛ばしたくなった。それを許してしまう主人公にもイライラしたし、本当に彼女まわりの話が不愉快だった。
でも同時に、主人公の異常さを表現するにはこれ以上になく効果的な描写であったとも思う。

主人公、対馬馨は異常者である。
sawn songの尼子司や、死体泥棒の塩津功平に連なる、無感情系精神異常者の系譜。作中でも血の通わないロボット扱いを度々受けているけれど、その通りで、本当にどこまでが本心なのかが分からなくなる瞬間がある。人間のふりの上手い、人間でない何かじゃないだろうか……?
でも、彼の視点で語られると「確かにそうかもしれないなぁ」なんて思えてくる瞬間もあって、その辺が瀬戸口氏の上手さであり、人間の真似が上手いってことだ。

・弥子√
弥子は可愛い(可愛い)。
学園モノ恋愛ADVを瀬戸口スパイスを足した、王道な作りだった。王道を王道のままに為しているから、ありきたりと云ってしまえばそうかも知れないけれど、やっぱり面白いからこそ王道なわけですよ。

・めぐる√
My favorite heroine、めぐるさん。
弥子√が学生の恋愛なら、めぐる√は大人の恋愛。老いて呆けてしまう恩師は、祖母や祖父、両親と置き換えれば、極めて身近で、誰もが向き合わなくてはいけない問題だろう。自分自身の事ではなくて、周りの人間の事を考えなくてはいけないという点で、アダルトな√といえる。
筆者がめぐるさんが好きだから、割と好きな√だったけど、客観的に考えると、地味めなお話かも知れない。

・no title
澄√とか、単純にBAD ENDとか呼ばれているけれど、何者にもなれなくて、誰も愛せなかった、名状し難い√ということで、エンディングテーマにちなんでno titleと呼ぼうかなと。
主人公が花井是清に追いついてしまう√なのかも知れない。分からないけど。とにかく、主人公は音楽に、ロックに殺される。それも花井さんが自殺したのと同じ年齢になった時に。素敵な皮肉だと思う。
凄惨で、本当に何の救いもない純粋なBAD END。過去の瀬戸口氏の作品を読んできた人なら、三日月を云い含めるシーンや、宗教にハマる彼女とか、風俗嬢の彼女とか、一人泥沼に沈んでいく主人公とか、「あぁ、これは間違いなく瀬戸口廉也が書いたんだな」って思える描写がふんだんに盛り込まれている。堪らないな。
全ての√で好きだけど、この√の金田は特に好き。

・三日月
最後まであんまり好きになれなくてごめんね、三日月。
TRUE END。これで瀬戸口ロックンロールが終わってしまうと思うと感慨深いなぁとか、プレイ中は全く思わなかった。直前にプレイしたno titleの絶望感から逃れたいという一心で、救いを求めるようにプレイしていた。
三日月の心が荒んでいったり、アシッドアタックを食らったり、「救いはないのかよ!」って叫びたかった。
でもね、全部スタジェネが持って行ったよ。キラ☆キラをプレイしていると、より一層感慨深いと思う。キラ☆キラはスタジェネの演奏から始まった。そして、MUSICUS!の終わりもスタジェネの演奏で締めくくられる。八木原さんが格好良すぎるんだよなぁ……。ライブが始まる前、花井さんの声が聞こえてきた瞬間、主人公と一緒にぼろぼろ泣いた。ズルいじゃない、あの演出。
キラ☆キラを自虐したり、椎野きらりの名前が出てきたり、行ったことのあるライブハウスが出てきたりと、プレイしていて「おおっ」って思うシーンが多かった気がする。
ラストもすっきりまとまっていて、爽やかな読後感だった。プレイして、本当によかったと思えた。

総括するとMUSICUS!は、「いきます」から始まる人生だった。

これだけは押さえておけ、東方アレンジ・アルバム 2019 ~菫の花言葉は「愛」~

毎年、書いてはお蔵入りにしている音楽紹介記事。たまには公開してみようと思った。
ここに乗っけているのは、当たり前だが筆者のお気に入りで、いち押しのアルバムだ。知っている人は「ほほう」と云いながら読み流してくれて構わないし、知らなかった人も「へぇ」と云いながらスルーしてくれて構わない。でも、イベントで、同人ショップで、「そういえば、誰かが紹介してたぞ」と、少しでも気になったのなら、是非とも手に取って欲しい。この記事が、そんなきっかけになれたらと願ってやまない。




1.ヒミツナグモノ&カタリツグモノ
サークル:TUMENECO
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公式HP ヒミツナグモノ:http://tumeneco.shoyu-sound.jp/himitsunagumono/
      カタリツグモノ:http://tumeneco.shoyu-sound.jp/kataritsugumono/

秘封曲のアレンジ一筋でお馴染み、TUMENECOのベスト盤。星を廻せ月より速くをはじめとした、彼らの代表曲が詰まっている。そして何より、タイトルにもなっているヒミツナグモノとカタリツグモノが佳い。菫子から蓮子とメリーへのメッセージであるヒミツナグモノ、それにこたえる形であるカタリツグモノという構図が、非常にファンタジックで素敵。どちらもアルバム書き下ろしで、新規の収録になっているから、一通りアルバムを揃えている人も必見ですよ。
秘封が好きなら間違いなく買い。また、興味があるんだけど、どっから手を出したいいのか分からないという秘封初学者にも、強くおすすめできる。布教にも使える。


2.Touhou Six String Best Collection
サークル:はちみつれもん
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公式HP:https://hlcd0054.tumblr.com/
筆者の愛してやまない、はちみつれもん&Aftergrowのベスト盤。ポストロック、オルタナティブロックのテイストをふんだんに盛り込んだエモーショナルな音づくりが特徴。ベスト盤ということで、過去の名曲はもちろんのこと、新規で二曲が収録されており、そのいずれも傑作。
特に、emptiesはあざとい程にエモいコードを突っ込みながらも極めて高い完成度を誇る、ここ数年で最も優れた東方アレンジであると信じている。須臾はプランクを超えてという比較的珍しい原曲のアレンジである点も面白い。
秘封曲が中心に収録されているが、少女綺想曲なども入っている。平成最後の怪物。とにかくお洒落なアルバム。頼む、買ってくれ。


3.TRAIL III
サークル:minimum electric design
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公式HP:http://miniele.web.fc2.com/tokusetsu/ALMR039-040/

ポストロック調の爽やかなサウンドが特徴のminimum electric design、10周年記念ベスト盤。もしもライブをやるなら、という設定のもとで収録曲が構成されており、サークルのカラーがばっちり現れている名盤だ。歌詞が非常に詩的、哲学的で面白いので、その辺りにも注目して欲しい。
これも秘封曲中心だが、UNオーエン、フォーフ・オブ・フォールなど人気曲(?)も収録されている。歌詞カードも併せて見たい、非常に味わい深いアルバムだ。


4.屠
サークル:凋叶棕
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公式HP:http://www.rd-sounds.com/C86_hh.html
歌詞カードへのこだわりといったら右に出るものはいない、面倒くさいファンが多そうでお馴染みの凋叶棕のアルバム。
ここまで紹介したものと違って、これはベスト盤ではない。そして凋叶棕といえば、東方アレンジ界隈でもトップクラスに多作なサークルだ。
では何故、数ある凋叶棕のアルバムの中で、あえて屠なのか。
それは最も凋叶棕らしさが出ている、と考えたからである。多分、このアルバムが好きな人は凋叶棕が好きになれるとだろうし、琴線に触れないのであれば好きになれないと思う。アルバム全体としての完成度が非常に高く、サークルのカラーが強く現れている。暗黒のフレーバーに満ちている、RDクレペリン検査。
凋叶棕の名前は聞いたことあるけど……という人は、ここからはじめてみてはどうだろうか。


5.シンクロ
サークル:森羅万象
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公式HP:http://shinra-bansho.sakura.ne.jp/synchro/

アップテンポで明るく可愛らしい曲が多い、でもそれだけじゃない。森羅万象の引き出しの多さの伺える傑作アルバム。
有頂天ドリーマーズでテンションをぶち上げて、純潔のアルメリアで凹もう。有頂天ドリーマーズはJOYSOUNDで、PV付きで歌えるぞ。
森羅万象スターターセット。とりあえずここからはじめよう。おそらく、一番とっつきやすいアルバムだと思う。


6.MOD
サークル:岸田教団&THE明星ロケッツ
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公式HP:https://kisidakyoudan.com/2019natsu.html

メジャアーティストとしても活躍中の岸田教団&THE明星ロケッツの最新アルバム(2019年12月現在)。
「全く違っていたりあんまり変わらなかったりします。」というキャプションが添えられているが、全く変わらない、ブレない、相変わらずの岸田教団だ。ど真ん中なロックンロール、ダークな世界観、最of高。曲のラインナップも非常に強力で、進化し続ける彼らを体現する一枚。

冬だから、電気サーカスを読もう

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 季節感というものは大切だ。真夏に熱い鍋を食べようとは思わないだろうし、真冬にビアガーデンには行かないだろう。やっぱりサマーウォーズは夏に観たいし、white album2は冬にプレイしたい。その方が、作品を流れる空気をイメージし易いから。作品には触れるのに適切な時期というものがあるんだと思う。旬と云い換えてもいい。
 この記事で紹介する「電気サーカス」は、この秋から冬にかけての時期にぴったりな小説だ。でも、暖房の利いた部屋や、優雅に熱い珈琲を片手にこの小説を読むのは適切じゃない。薄暗い、寒い部屋の隅っこで、息を潜めて読むのが相応しいだろう。

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タイトル:電気サーカス
著者:唐辺葉介
2013/11/21初版

 本作品のジャンルは、何とも名状しがたい。私小説形式のフィクションという点では、現代版の人間失格みたいな感じだろうか。
 時代背景は、インターネット黎明期。1990~2000年、テキストサイトが流行った頃。電話回線を使ってネットに繋いでいた時代。上手くイメージできないなら、テキストサイトを、ブログやSNSと読み替えると身近に感じられると思う。主人公はこのテキストサイトを通じて、ネットの向こうの人々と交流する。いわゆる、オフ会に参加することをきっかけに、物語は動き出す。
 ポイントは、登場人物が全員クズであるというところ。主人公も、主人公の父親も、友人も、隣人も、彼女も、出てくる奴らは全員クズだ。ここでのクズという言葉には、一切の侮蔑的なニュアンスを含んでいない。客観的に考えて、人間として破滅している、人間失格という意味だ。
 このクズさが、刺さる人には刺さる。自分の中に、こういう心の弱さとか醜さがあると思えるのなら、きっと面白いくらいキャラに共感が持てるだろう。でも、愛着が得られるかはまた別の話。この作品に出てくる登場人物が好きになれるかは分からないけれど。
 この作品に救いはない。読んで、前向きな気持ちになんて全くならないだろう。反面教師として、自分はこうはならないようにしよう、と思うくらいだろうか。読み終えて、虚無感から溜め息が出る感じ。
 それが、この時期には相応しい。
 人間はこの時期、憂鬱になるという傾向があるらしい。その傾向は本能的なもので、避けることはできない。そんな憂鬱な時に、アッパーな話はそぐわないだろう。それは、鬱病患者に24時間応援歌を聴かせ続ける拷問みたいなものだ。
 つまり筆者が云いたいのは、憂鬱なら鬱に沈み込もうという話。多くの場合、心の流れに素直に従った方が、抵抗が少なくて、穏やかでいられる。

 電気サーカスはWeb上で有料公開されている(2019年11月現在)。一週間の無料購読期間を利用すれば、ただで読むこともできる。しかしながら、全て読もうと思うと、書籍にして500頁弱あるので、ネット上で追うのは少し面倒かもしれない。その時は、Amazon Kindle版が1500円程度で売っているから、そちらがおすすめ。

 秋の夜長のお供に電気サーカス、おすすめです。是非。


閑話

 この本に出合ったのは、2013年の冬。時期的には、丁度今くらいだった。筆者は唐辺葉介=瀬戸口廉也の熱烈なファンであったから、迷わず購入した。たしか、その日のうちに読んだと思う。そして、うわぁーってなった。
 電気サーカスは、瀬戸口氏の作品の中では、割と普通だ。彼の書く物語に出てくる父親はだいたいクズだし、恋人に酷いフラれ方をするのもいつも通り。なのにどうしてか、酷く生々しく感じられて、麻酔に掛けられたみたいに、しばらくぼうとしていたのを覚えている。多分そこが、この本の巧さなんだと思う。
 淡々と語られる主人公の一人称視点をずっと追っている内に、彼の身の回りで起こったことを追体験させられているような、そんな気持ちになった。人生が感じられる作品と云うと、少し大げさだろうか。
 筆者はこの小説を、何十回も読み直していると思うけれど、それでもまだ飽きない。読むときの気分によって、ある時は喜劇に、ある時は悲劇に、その時々によって違う感じに思える。心から大好きだといえる作品の一つだ。サークル名も、ここから借りていたりいなかったり。

夢現Re:Masterの感想メモ


 ネタバレを含むよ。気を付けて。


・全体を通して
 百合ゲーである以上に、何かを作ったことのある人だったら感じる所が有ると思う。(ゲーム作ってるメーカがゲーム制作をテーマにするって、結構な自虐的な気がするけど)同人小説家として、共感できる部分や勉強になる部分があって、楽しく読み進めることができた。
 百合の部分も、一切男が出てこない上、女同士でも子供のできる設定(婦婦と書いて「ふうふ」と読ませる)もあり、狂気的なくらい徹底している。
 凄く丁寧に作られた百合ゲーってのが、全体としての感想。
 あと、購入のきっかけになった藤ちょこの絵は、やっぱり綺麗。


・なな√
 この√は一般的なADVとは異なる形を取っていて、ヒロインの√がヒロインの視点で進行する。選択肢も出るから、ヒロインが主人公を攻略するって感じかな。それが上手に機能している。
 彼女は本作のヒロインの中で一番「女っぽい」キャラクタだ。計算高くて腹黒くて、でも情に流されてしまう場面もある。そういう心理描写は、彼女の視点だからこそできるものだと思う。ADVだとどうしても主人公の心理描写に終始してしまうからね。
 たとえば、最初に主人公に好意を向けられた時の冷めた感じとか、凄く良いなって。「ななの好き」と「あいの好き」のギャップが少しずつ埋まっていく感じが、ドロドロしてて、面倒くさくて、好き。
 Bad Endの主人公が怖い。白衣性恋愛症候群の頃から思っていたけど、Bad Endが本当にぞっとする。ただ、心の壊れた女の子は大好き。


・マリー√
 少し、掘り下げが足りなかったような気もする。主人公に惹かれた一番の理由は、自分を見つけてくれたから?
 マリーは他√での立ち回りが素敵だし、マリーというキャラクタの魅力が曇る事もないのだけれど、少しだけ残念だったり。


・さき√
 初見ではクールロリババア系のキャラかなって思っていたんだけど、凄く大人で、魅力的なキャラクタだった。ライタって立場が共感できたこともあって、プレイしていく中でどんどん好きになっていった。さき先生大好き。
 このルートでは、三人称的な視点が取られていて、各登場人物にそれなりにスポットが当たる。そしてそれぞれの登場人物が、さきを通して成長していく。
 さきは思慮深さと人間臭さのバランスの良いキャラクタで、頼りになるし、親しみやすくもあるし、憎たらしくもある。そういう魅力を十二分感じられる、王道サクセスストーリィだった。
 でも相変わらず、Bad Endの主人公が怖い。どうしたお前?ってなる。


・こころ√
 途中まで「何じゃ?」って思って読んでた。ファンタジィが過ぎるのでは?って。でも、リ・マスターアップ=Re:Masterとか、姉妹の名前は夢と現とか、タイトルが回収されるに連れて、この作品って夢=フィクションと現=リアルの中間をふわふわと浮かぶ話なんだなって気付いた。だから、最初は首を傾げていたゲームのキャラと魂が入れ替わっているっていう設定も、自然と受け入れて入る自分がいた。そういうドグラ・マグラ的な効果(?)を狙ってるいるのかどうかは分からないけれど、凄く説得力が有るなって。
 こういうふわふわした話って、結構好みが分かれると思うんだけど、僕は好き。
 他の√とは一線を画す、不思議で、素敵な読後感だった。本当に、素敵な大団円。


・雑感
 本当に久々に寝る間を惜しんでゲームをした気がする。それくらい楽しかった。
 ずっと行き詰っていたというか、死んでいた創作意欲が掻き立てられたので、ひと段落したら僕も小説を書こうかなって。

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Author:clown
動物も居なければ、トランポリンもブランコも無い、道化師1人の演目を御覧あれ。


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